噂話に興じつつ。
サークルの後輩に彼女ができた。
今月のアタマに付き合いはじめたらしい。
先月「花火に誘われました」
と、はにかみながら言っていた彼。
「いや、別に好きじゃないんですけど」
と言う割には、やたら悩んでた彼。
僕は彼のそのどっちつかずな態度が、ものすごく歯がゆかった。
さらに自分のことを棚に上げて、
「先輩はSさんのことが好きなんですか?」
などと勘するどく質問してきたりするのがしゃくにさわる。
彼を見ているとまるで自分を見ているようだった。
自分のことには答えを出せないのに、やたら他人のことにばかり興味があるふりをする。
本当に興味があるのは、たった一人のことだけなのに。
Sは噂話が好きな女の子だ。
だから僕はSとメールで彼のことなどを話した。
人の幸せをネタにするなんて卑怯だとは思うが、
卑怯でもいいんだ。
楽しければいいや。
法学部の友人Oと、後輩の件について話した。
「今度はお前やな」
僕はOには、Sのことなど話したことはないのに、
すっかり見通されていた。
決して後輩の勘が鋭かったわけじゃなくて、
どうやら周囲にはすっかり知れ渡っていたようだ。
飲み会やら、集まりの度に彼女の横に着きっきりだったんだ。
当たり前と言えば当たり前か。
周りの人間が気付いているのに、
当の本人が気付いていないということはありえるのだろうか?
いずれにせよ、僕は僕の気持ちを、僕の言葉で、彼女に、伝えなければいけないんだと思う。
このままどっちつかずではいられないから。